半坪ビオトープの日記

山梨岡神社、本殿


山梨岡神社の本殿は、1間社隅木入春日造・杮葺きである。神明造(切妻造)の妻に、向拝の軒が繋がった形になっている。簡素な素木造で、蟇股の彫刻も見事である。室町時代の建立で、飛騨の匠の造立といわれる。

本殿の前には、「夔(き)ノ神」と呼ばれる神像が祀られている。飛騨匠の作と伝えられ、中国古代の地理書「山海経」に登場する独足の奇獣で、魔除け・雷避けの信仰を受けている。慶応2年の「来由記」によれば、享和2年(1802)には徳川将軍家から真影を差し出すよう命じられている。現在は7年に一度開扉されている。

社殿の右手にある神楽殿では、毎年4月に太々神楽が奉納される。宮中の舞楽に似た神楽であり、天の岩戸の故事を中心に記紀神話の世界を表現した、出雲神楽系の24種の舞が伝わっている。

拝殿の右手、石を抱きかかえた神木の手前に、平安時代中期の歌人能因法師の歌などの古歌の碑がある。
甲斐かねに咲にけらしな足引きのやまなし岡の山奈しの花 能因法師
足曳の山なし岡に行く水のたえすそ君を恋わたるべき   詠人不知
神垣の御室の山の榊葉は神の御前に茂り合ひけり     詠人不知

境内には末社、稲荷社が祀られている。

楽殿の裏手の山裾には大きな石がいくつも集められていた。山梨岡神社の岡は、背後の御室山を指し、古来より神のいる場所と信仰されてきた。中腹には当社の旧社地・御室山古墳がある。積石塚の円墳で、径11m高さは2mある。毎年4月には御室山で笈形焼きが行われる。笈の形を模した一辺400mの日本一の山焼きである。