半坪ビオトープの日記


群落をつくって咲いている白い花は、バラ科ダイコンソウ属のチングルマ(稚児車、Geum pentapetala)である。北海道、中部以北の高山帯の雪田周辺の砂礫地や草地に生える落葉小低木で、高さは10cmほどになる。葉は羽状複葉、枝は地面を這い、群落をつくる。花茎の先に径3cmで花弁5枚の帯黄白色の花を一つ咲かせる。花後、花柱は伸びて放射状に広がる。和名のチングルマは、この実の形が子供の風車と見立て、稚児車から転じて名付けられた、愛嬌のある高山植物である。チングルマ属(Sieversia)と分類する説もある。

この地味で目立たない花は、ゴマノハグサ科クワガタソウ属のシナノヒメクワガタ(Veronica nipponica var. shinano-alpina)である。本州の日本海側の高山に分布するヒメノクワガタの変種で、北アルプス南部、乗鞍岳、御岳山、中央アルプス南アルプスの高山帯の草地に生える多年草で、高さは10cmほどになる。花径は6mmほどと小さく、花は帯薄紫の白色で数個咲かせる。

こちらの小さな花は、八丁坂でも見かけたツガザクラ(Phyllodoce nipponica)で、中岳山頂付近に小さな群落がたくさん見かけられた。紅紫色を帯びた花柄と萼が白い花を支えている様が可愛い。

色々な高山植物を見ながら登ると、中岳(2925m)には思いのほか簡単にたどり着いた。山頂には大きな岩がゴロゴロと積み重なっていて、あちこちで岩をバックに記念写真を撮っている姿がある。

剣岳(2931m)の方を振り返ると、左手に乗越浄土に人影が見え、宝剣岳の彼方には空木岳(2864m)、南駒ヶ岳(2862m)と中央アルプスの高峰が連なり、その右手に三ノ沢岳(2846m)に雲がかかっている。

山頂周辺には先ほど見かけた赤紫色のタカネシオガマや黄色のミヤマキンバイ(Potentilla matumurae)もきれいに咲いていた。ミヤマキンバイの属名、Potentilla は、ラテン語 Potens(強力な)の縮小形で、ヨウシュツルキンバイ(P. anserina) の強い薬効にちなむ。種の形容語は、植物学者の松村任三の名にちなむ。平地でよく見かけるキジムシロの近縁種で、高地ではよく見かける高山植物である。

中岳から駒ヶ岳(2956m)を眺めると大きく下ってまた登るようだが、標高差でいえば60m下って90m上るだけである。鞍部には頂上山荘が建っていて、人影も見える。左手には2本の巻き道が見える。頂上木曽小屋から下る巻き道は上の道だろう。そこを下ってくるつもりだ。