半坪ビオトープの日記


陽明門の背面(内側)、つまり唐門や拝殿のある方から振り返って眺めると、数多い彫刻の有様は似ているが違うところもいくつかある。唐破風部分は、額がないだけで正面側と同じである。

門の脇にある塀は正面側に繋がっているので、門の左側面が見える。そこには牡丹の花の大きな浮彫りがある。
側面下段の人物彫刻が3組見えるが中央は「四睡」で、豊干(ぶかん)、寒山、拾得(じっとく)の3人が虎と眠っている。禅の悟りの境地を表している。
背面4本の柱には正面と同じくグリ紋と呼ばれる渦巻状の地紋が彫られているが、右から2本目の柱だけ渦巻き文様が下向きになっている。これを「魔除けの逆柱」と呼ぶ。

正面には左右に随身像が安置されていたが、背面の左右には唐獅子が構えている。右側2本の柱の間には口を開いた阿形の緑のたてがみを持つ唐獅子が構えているが、左側(右から2本目)の柱の渦巻き文様が唯一異なり下向きである。これが「魔除けの逆柱」である。この逆柱は誤って逆向きにしたわけではなく、「建物は完成と同時に崩壊が始まる」という伝承を逆手にとり、わざと柱を未完成の状態にすることで災いを避けるという、魔除けのためとされている。

左側の口を閉じた吽形の唐獅子は青のたてがみをしている。

背面(内側)の右の側面にも牡丹の花の浮彫りがある。左端に逆柱が半分見える。

東照宮の建物に刻まれた彫刻の総数は5173体あり、最多は本社の2468体(本殿1439体、拝殿940体、石の間89体)、次いで唐門の611体、陽明門が3番目で508体の彫刻がある。
彫刻をテーマで分類すると人物、霊獣・動物、花鳥、地紋(図形・文様)の4つになり、それらが使われる建物や場所に法則があるという。
例えば、人物の彫刻があるのは陽明門と唐門に限られ、霊獣の唐獅子は陽明門に、獏は本殿に集中しているそうだ。陽明門には霊獣と呼ばれる想像上の動物が194体いるといわれる。
背面下段にある7組の人物彫刻はすべて中国の仙人である。一番右は、鯉に乗る琴高(きんこう)仙人であり、その左は、竜に乗る黄仁覧(おうじんらん)である。緑の唐獅子の上に見える仙人である。人物像の上の段の唐子など9組の1番右は、犬と遊ぶ唐子であるが、2番目はミミズク、4番目は山鵲(やまかささぎ)である。

背面下段にある7組の人物彫刻のうち、1番左は、中国八仙の一人、李鉄拐であり、医薬の神として口から煙のような物を吹き出している。左から3番目は、王子喬(おうじきょう)という中国古代の仙人である。
唐子などの段の1番左にも山鵲が1羽飛んでいる。