半坪ビオトープの日記


鶴岡市高坂生まれの藤沢周平は、湯田川村立湯田川中学校の教員を経て小説家になったため、湯田川温泉に縁が深い。10年ほど前には、藤沢周平原作、山田洋次監督による映画「たそがれ清兵衛」のロケが由豆佐売神社で行われ、エキストラで湯田川温泉の人たちが大勢出演したという。
ほかにも柳田国男種田山頭火斎藤茂吉横光利一竹久夢二などの文人墨客が数多く湯田川温泉を訪れている。
由豆佐売神社の本殿の造営は、神仏分離令により神社建築に近い形を取らせるために、明治15年、庄内の名棟梁、高橋兼吉に増築してもらったものである。拝殿の裏に階段を作り、その上に本殿があるので、よく見えないのが残念である。拝殿の右にはいくつか社殿が続いている。

さらに右手には長い石段が続いていて、その上の左手に興喜天満宮(天神社)がある。別当寺の長福寺が大和長谷寺の直末であるから、本山の鎮守の神、興喜天満宮を勧請したものと思われる。

その先には古峯神社が祀られている。由緒はわからないが、古峯神社で有名なのは、栃木県鹿沼市古峯ヶ原に鎮座する古峯神社であろう。日本武尊の神霊を祀ったのが起源といわれ、日本武尊が相模で野火に囲まれたが火を鎮めたことに因み、防火の神として民間で篤く信仰されている。

拝殿の右手前には、鶴岡出身の国語学者、三矢重松の歌碑が建っている。「わがおもふ田川のおとめにかささせて見ましくぞおもふ堅香子(かたかご、かたくり)の花」その右には鶴岡市指定文化財のモミの木がある。

境内の石段右手には、樹齢1000年といわれる県指定天然記念物の「湯田川の乳イチョウ」という巨樹がある。高さが約37mあり、大小数本の乳柱が垂れ下がるが、雄株であり実はならないそうだ。

神社に南隣して真言宗豊山派の大日山長福寺がある。縁起によれば大同2年(807)の開創で、かつては大和長谷寺の直末で配下に7坊を従え、由豆佐売神社の別当寺をつとめた。寺宝の伝恵心僧都作の三千仏画像は室町期、境内右手の堂内の石造大日如来座像は鎌倉期のものという。