半坪ビオトープの日記

早池峰神社

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早池峰山
最終日は早池峰山1917m)を計画していたが、体調と時間の都合で断念し、早池峰神社などを見るだけにした。左手の河原の坊コースは、大雨による崩落で5年前から通行禁止となっていた。

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早池峰神社の随神門
大迫町にある早池峰神社は、由緒によると大同2年(807)田中兵部、始閣藤蔵の両名が山頂に姫大神を祀ったことに始まるという。昔は仁王門だったと見えるが、これが随神門。入母屋造の単層門。屋根は鉄板葺で、五間一戸、十二脚。扁額は「早池峰山」と見える。

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早池峰神社

早池峰神社は、祭神として瀬織津比売神を祀る。正安2年(1300)越後の阿闍梨円性が早池峰大権現を祀って一寺を建立し、池上院妙泉寺と名付けた。中世には二度の火災で多くの堂宇や記録が失われた。神仏混交の時代には新山堂と呼ばれ、この地が天正19年(1591)に南部氏の領地になると、早池峰山盛岡藩の東の鎮山として重く位置づけられ、早池峰大権現を祀る別当寺として妙泉寺は復興された。慶長15年(1610)から3年間に新山堂、薬師堂、本宮、舞殿、鳥居、客殿など六社が建立され、歴代藩主によって手厚く保護されてきた。しかし、明治維新神仏分離令により、妙泉寺は廃寺となり、新山堂が仏教色を排して早池峰神社となった。狛犬は関西に多い、浪花狛犬である。

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入口の扁額

拝殿入口の扁額に書かれているのは早池峰神社ではなく、「早池峰山」と読める。

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拝殿内部
現在の拝殿は、外陣と内陣に分かれ、奥行き五間のうち前面二間が外陣、後面三間が内陣。慶長17年(1612)に紀州の大工・新右衛門、秋田の箱匠・久次郎・右衛門により建立された。岩手県内唯一の現存建物で、その後2回修復の手が入っているが、内陣柱を中心とした軸組や、木鼻の手法、拝殿軒周りの装飾等にも、江戸初期の堅実で力強い建築手法が随所に見られる。

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破風の懸魚や妻壁の妻飾り
破風の懸魚や妻壁の妻飾りも虹梁の上下の架構も簡素ながらも装飾が施されて力強い。

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幣殿の奥に本殿
拝殿の奥には幣殿があり、本殿は幣殿の奥に繋がっている。

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白龍社
拝殿左手奥に境内社の白龍社がある。円空仏のレプリカらしきものも祀られている。

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大権現社

拝殿左手奥のこちらの境内社には、「大権現社」の扁額が掲げられている。

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稲荷神社
拝殿左手奥のこちらの境内社は、稲荷神社。

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白髭大明神
拝殿手前左側の境内社には、「白髭大明神」の扁額が掲げられている。

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境内社
境内社はいくつもあるが、詳細は不明である。狛犬は関西に多い、浪花狛犬である。

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天然記念物のしだれ桂
随神門の右手前に国の天然記念物に指定されている「しだれ桂」がある。岩手県には世界的にも例のない、枝葉の垂れ下がった「南部しだれ桂」という珍木がある。大木は盛岡市などにあり、現在では三本が国の天然記念物である。このしだれ桂は、元は岳の妙泉寺の境内にただ一本生育していたものだった。それが見事に大木となったが、寺の普請のために切られてしまった。しかし、その株から出た新梢は、各地の寺院などに分けられ、後に国の天然記念物に指定された南部しだれ桂の原木になったという。

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参集殿と神楽殿
その右手に参集殿の建物があり、さらにその右手前に神楽殿(舞殿)が建っている。

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岳妙泉寺跡
そして随神門を背にして右手下(北側)にある空き地が、岳妙泉寺跡である。妙泉寺は真言密教の寺院であり、正安2年(1300)(あるいは正中2年(1325)ともいう)越後の阿闍梨円性が早池峰大権現を祀って一寺を建立し、池上院妙泉寺を開創したと伝えられる。慶長年間に盛岡藩により新山堂・薬師堂などの堂宇が建立され、築地塀や櫓門などの要害普請もなされた。さらに盛岡城下に二万八千坪もの広大な面積の宿寺を賜るなど大いに繁栄した。しかし、明治維新廃仏毀釈で廃寺となり、庫裡と客殿内に祀られていた僅かの仏像を残して破壊された。
 

 

早池峰神社

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早池峰山
最終日は早池峰山1917m)を計画していたが、体調と時間の都合で断念し、早池峰神社などを見るだけにした。左手の河原の坊コースは、大雨による崩落で5年前から通行禁止となっていた。

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早池峰神社の随神門
大迫町にある早池峰神社は、由緒によると大同2年(807)田中兵部、始閣藤蔵の両名が山頂に姫大神を祀ったことに始まるという。昔は仁王門だったと見えるが、これが随神門。入母屋造の単層門。屋根は鉄板葺で、五間一戸、十二脚。扁額は「早池峰山」と見える。

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早池峰神社

早池峰神社は、祭神として瀬織津比売神を祀る。正安2年(1300)越後の阿闍梨円性が早池峰大権現を祀って一寺を建立し、池上院妙泉寺と名付けた。中世には二度の火災で多くの堂宇や記録が失われた。神仏混交の時代には新山堂と呼ばれ、この地が天正19年(1591)に南部氏の領地になると、早池峰山盛岡藩の東の鎮山として重く位置づけられ、早池峰大権現を祀る別当寺として妙泉寺は復興された。慶長15年(1610)から3年間に新山堂、薬師堂、本宮、舞殿、鳥居、客殿など六社が建立され、歴代藩主によって手厚く保護されてきた。しかし、明治維新神仏分離令により、妙泉寺は廃寺となり、新山堂が仏教色を排して早池峰神社となった。狛犬は関西に多い、浪花狛犬である。

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入口の扁額

拝殿入口の扁額に書かれているのは早池峰神社ではなく、「早池峰山」と読める。

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拝殿内部
現在の拝殿は、外陣と内陣に分かれ、奥行き五間のうち前面二間が外陣、後面三間が内陣。慶長17年(1612)に紀州の大工・新右衛門、秋田の箱匠・久次郎・右衛門により建立された。岩手県内唯一の現存建物で、その後2回修復の手が入っているが、内陣柱を中心とした軸組や、木鼻の手法、拝殿軒周りの装飾等にも、江戸初期の堅実で力強い建築手法が随所に見られる。

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破風の懸魚や妻壁の妻飾り
破風の懸魚や妻壁の妻飾りも虹梁の上下の架構も簡素ながらも装飾が施されて力強い。

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幣殿の奥に本殿
拝殿の奥には幣殿があり、本殿は幣殿の奥に繋がっている。

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白龍社
拝殿左手奥に境内社の白龍社がある。円空仏のレプリカらしきものも祀られている。

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大権現社

拝殿左手奥のこちらの境内社には、「大権現社」の扁額が掲げられている。

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稲荷神社
拝殿左手奥のこちらの境内社は、稲荷神社。

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白髭大明神
拝殿手前左側の境内社には、「白髭大明神」の扁額が掲げられている。

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境内社
境内社はいくつもあるが、詳細は不明である。狛犬は関西に多い、浪花狛犬である。

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天然記念物のしだれ桂
随神門の右手前に国の天然記念物に指定されている「しだれ桂」がある。岩手県には世界的にも例のない、枝葉の垂れ下がった「南部しだれ桂」という珍木がある。大木は盛岡市などにあり、現在では三本が国の天然記念物である。このしだれ桂は、元は岳の妙泉寺の境内にただ一本生育していたものだった。それが見事に大木となったが、寺の普請のために切られてしまった。しかし、その株から出た新梢は、各地の寺院などに分けられ、後に国の天然記念物に指定された南部しだれ桂の原木になったという。

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参集殿と神楽殿
その右手に参集殿の建物があり、さらにその右手前に神楽殿(舞殿)が建っている。

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岳妙泉寺跡
そして随神門を背にして右手下(北側)にある空き地が、岳妙泉寺跡である。妙泉寺は真言密教の寺院であり、正安2年(1300)(あるいは正中2年(1325)ともいう)越後の阿闍梨円性が早池峰大権現を祀って一寺を建立し、池上院妙泉寺を開創したと伝えられる。慶長年間に盛岡藩により新山堂・薬師堂などの堂宇が建立され、築地塀や櫓門などの要害普請もなされた。さらに盛岡城下に二万八千坪もの広大な面積の宿寺を賜るなど大いに繁栄した。しかし、明治維新廃仏毀釈で廃寺となり、本殿ほかと僅かの仏像を残して破壊された。
 

 

えさし藤原の郷、正法寺

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えさし藤原の郷

翌日は栗駒山に登る予定だったが、あいにく雨なので岩手県奥州市にある、えさし藤原の郷を見物した。奥州藤原氏の歴史を顕彰しながら、古代から中世にかけての東北の歴史文化を体感できる施設。NHK大河ドラマ炎立つ」のセットを利用し、1993年に整備・開園された。奥州藤原氏の祖先である藤原経清と、平泉を創設した奥州藤原氏初代・清衡が居住した豊田館跡付近に造られた。平安建築群が再現されたテーマパークとしては日本唯一であり、多くのドラマ撮影の舞台となっている。園内に入ると8〜9世紀ごろの政庁が想定されて造られている。

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平安時代貴族の娯楽道具
政庁の北側は律令時代(12世紀)の政庁の再現である。朱塗や太い円柱は格式の高さを示している。所々に武具や娯楽道具などが展示されている。平安時代貴族の娯楽には、詩歌・管弦をはじめ、囲碁・双六・貝合わせ・蹴鞠などがあった。囲碁と双六は6〜7世紀に中国から伝来した。

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源頼義陸奥守就任の場面
政庁の一角に、源頼義陸奥守就任の場面が復元されている。永承六年(1051)、前九年の役が勃発し、陸奥守・藤原登任が敗れて更迭された後任として、頼義が陸奥の政庁だった多賀城に着任した。その場に嫡男・義家や藤原景季も従っていた。

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源義経静御前
奥州藤原氏は前九年・後三年の役の後に藤原清衡が奥州の支配を委ねられたのに始まる。初代清衡は平泉に中尊寺を建立した。秀衡はその三代目に当たり、源義経を養育したことでも知られる。治承4年(1180)に源頼朝が平家打倒の兵を挙げると、義経は秀衡が引き止めるも兄の元へ向かった。平家を滅亡に追い込んだ頼朝は、対立する義経を追い詰めるが、秀衡は逃亡してきた義経を匿う。頼朝の無理難題を突きつけられた秀衡は反逆者に仕立てられたまま亡くなる。後継者の次男・泰衡は頼朝の圧力に屈し義経を自害に追い込んだが、頼朝は許可なく義経を殺害したとして奥州征伐を決行し、奥州藤原氏は滅亡した。

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義経自害の持仏堂
文治五年(1189)閏4月30日、泰衡は500騎の兵で10数騎の義経主従を衣川館に襲った。義経は持仏堂に籠り、正妻の郷御前と4歳の女子を殺害後、自害した。享年31だった。

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見返り坂から見下ろす政庁
政庁から東南方向に高台があり、経清館と清衡館などの建物群がある。そこへ上がる途中の見返り坂から政庁を見下ろすと、復元された政庁の建物が整然と並んでいる。

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藤原経清
高台の上にある経清館は、藤原経清が江刺に移り住んだ11世紀半ば頃の地方豪族の一般的な館を模している。経清は、前九年の役の始まりでは安倍氏側に属していたが、源頼義陸奥守に任じられた際、大赦により許された安倍頼時が朝廷に帰服すると経清も頼義に従った。天喜4年(1156安倍氏が再び蜂起し合戦に至ると、経清は頼義に従い参戦するが、同じく安倍頼時の娘を妻にしていた平永衡が謀反の疑いで殺されると、安倍氏に合流した。頼義が清原氏の協力で安倍氏を滅ぼして前九年の役終結した後、経清は頼義の面前で錆刀で鋸挽きにより斬首された。

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奥州藤原初代清衡
隣の清衡館は、経清の子・奥州藤原初代清衡が江刺に居住した寝殿造初期の館である。7歳で父清衡と共に処刑されるところ、母が敵将・清原武則の長男・武貞に再嫁したため養子となり難を逃れた。清原家の相続争いである後三年の役は私闘とされたが、生き残った清衡は奥州藤原氏の祖となった。その後、平泉に居を移し、奥州藤原氏4代100年の栄華の基礎を築いた。

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平泉の無量光院
奥州藤原氏の初代清衡が平泉に中尊寺を、二代基衡が毛越寺を造営し、三代秀衡が建立したのが無量光院である。平泉の中心部に位置し、近くに奥州藤原氏の政庁・平泉館があった。度重なる火災で焼失し、今では土塁や礎石が残るだけである。この藤原の郷に、遠景として縮小再現されている。

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伽羅御所の泰衡・秀衡・義経
平泉にある無量光院の東門に接して建てられた伽羅御所は、奥州藤原氏・秀衡の居館であり、以後4代泰衡の代まで使用された。この藤原の郷に、推定復元され、平安時代寝殿造の様式を再現した日本唯一の建造物となっている。秀衡は死の直前、源頼朝との対立に備え、国衡・泰衡兄弟の融和を説き、義経を大将軍として一致結束するよう遺言して没した。ここでは伽羅御所での場面を再現している。左から泰衡・秀衡・義経

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曹洞宗正法寺
奥州市水沢黒石町に、曹洞宗大梅拈華山正法寺がある。かつては大本山永平寺總持寺に次ぐ曹洞宗の第三本山と呼ばれていた。「奥の正法寺」の名で広く親しまれ、日本一の茅葺き屋根建築として有名な法堂や庫裡、惣門、鐘楼堂は国の重要文化財である。

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正法寺の惣門
惣門は、寛政11年(1799)の正法寺炎上の時も焼け残り、蛇紋岩の石段とともに古刹の風格を感じさせる。切妻造り、とち葺の四脚門で、寛文5年(1665)仙台大工棟梁新田作兵衛による建築。寺院の四脚門としては岩手県最古の遺構で、建築史上貴重とされる。

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正法寺の法堂(本堂)
正法寺は現在、73ヶ寺の末寺を有し、その格式にふさわしい寺宝や伽藍が数多く保存されている。法堂(本堂)は入母屋造で、日本最大級の茅葺屋根を備え、桁行21間半(約29.6m)、梁間12間半(約21m)、棟高(屋根の高さ)約26m、建築面積約769平米(約233坪)。棟には伊達家の家紋、竹に雀、三引両、九曜がついている。法堂の左手には僧堂(坐禅堂)が建ち、右手奥には開山堂が建っている。

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正法寺の法堂

法堂とは、住職が仏祖に代わって説法する道場のことで、堂内中央の須弥壇には秘仏本尊の如意輪観世音菩薩を祀り、朝晩の読経、年間の様々な法要もここで行われる。如意輪観世音菩薩は、寄木造の像高48 cm。13世紀後半から14世紀初頭の制作で、寺伝では「春日作」という。西序室の中に安置される釈迦三尊像は、寄木造で、像高は釈迦如来53 cm、文殊菩薩41 cm、普賢菩薩40.8 cm。明徳3年(1392)以降、10年間に亘って正法寺関係の仏像を造り続けた仏師・立増の作と伝わる。

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庫裡と鐘楼堂

法堂の向かって右手前(南)に建つ庫裡は、寄棟造の約528平米(約160坪)の大建築で、応接間、尚事寮(事務を司る)、旧典座寮(食事を司る)など様々な機能を持つ建物である。土間と典座寮の間には韋駄尊天が祀られている。韋駄尊天は僧・伽藍及び斎供(食物)の守護神とされ、寺院の玄関口に祀られる。右に続く鐘楼堂は、江戸末期の建築で、現在も定刻に時を知らせる梵鐘を撞いている。

 

 

秋田駒ケ岳、下り

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阿弥陀池

阿弥陀池は北側に最高峰の男女岳、南西側に男岳、南東側に横岳という3つのピークに囲まれている。男岳と横岳はカルデラの外輪山であり、男女岳は最高峰でありながら、カルデラの外側に位置している。阿弥陀池も同様にカルデラの外側にある。カルデラの外側にも池を形成するような大きな窪地があるわけで、秋田駒ケ岳山頂部の地形は非常に複雑である。阿弥陀池の周りにもお花畑が広がっている。東にある阿弥陀池避難小屋を正面にして、右側に横岳、左側に男女岳がある。今年は阿弥陀池の水がかなり少なく感じる。

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男女岳(1637m)
左手(北)の男女岳(1637m)が最高峰でありながら、カルデラの外側に位置しているという。調べたところ、秋田駒ケ岳玄武岩安山岩の二層式成層火山で、山頂部北東側の北部カルデラと南西側の南部カルデラが相接しており、カルデラ形成期の火砕流・降下火砕物が山麓や火山東方に分布する。北部カルデラは最高峰の男女岳などの火砕丘や溶岩にほとんど埋積されており、男女岳北東側には爆裂火口があり、8号目からすぐの崩壊地がそれにあたる。男岳は両カルデラの接合部西縁上の峰。南部カルデラには女岳・小岳・南岳の火口丘があり、溶岩流がカルデラ底を覆い、カルデラ南西方から溶岩が西方へ流下している。しかし、細かい地図を見ないとわかりづらい。男女岳の中腹まで、チングルマを中心としたお花畑が広がっている。

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ミヤマウスユキソウ
こちらのエーデルワイスによく似たウスユキソウは、ミヤマウスユキソウ(Leontopodium fauriei)という多年草秋田駒ケ岳鳥海山、月山、飯豊山朝日連峰など東北地方の日本海側の高山に分布し、山頂付近の乾いた風衝草原に生育する。

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ミヤマキンバイ
こちらの黄色い花は、キジムシロ属のミヤマキンバイPotentilla matsumurae)という多年草。北海道と本州中部以北の高山帯の砂礫地、草地、雪田の周辺などに生える。葉は3出複葉、花は2〜7個つき、鮮黄色で直径約2cm。花弁は5個あり、広倒卵形で先が僅かに凹む。花弁の元が橙色を帯びる花もある。

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ベニバナイチゴ
こちらの赤い花は、キイチゴ属のベニバナイチゴという落葉低木。北海道西南部と本州中部以北の日本海側の亜高山帯〜高山帯の林縁や渓流沿いに生える。よく分枝し高さ約1mになり、全体に棘がない。葉は3出複葉、縁には重鋸歯がある。花期は6〜7月。枝先に濃紅色の5弁花を1個つけ、下向きに咲く。秋に熟す実は大粒で食べられるが、それほど美味しくはないといわれる。

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ナナカマド
こちらの白い花は、お馴染みのナナカマド(Sorbus commixta)という落葉高木。北海道〜九州の冷温帯の山地帯の上部および亜高山帯の隣地に自生する。高地では小低木となることが多い。葉は奇数羽状複葉で、小葉は4〜7対向かい合ってつく。縁には浅く鋭い鋸歯がある。花期は5〜7月。枝先に散房花序を出し、白い花を多数つける。花弁は5個。秋に鮮やかに紅葉し、赤い実を熟す。果実は果実酒にも利用される。

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コケモモ
こちらの小さな花は、コケモモ(Vaccinium vitis-idaea var. minus)という常緑小低木。北海道と本州中部以北、四国の亜高山帯上部〜高山帯の林縁、草地、岩礫地などに生える。茎の高さは5〜15cmになり、よく分枝する。葉は革質で互生し、ほぼ楕円形で光沢がある。縁は全縁。花はやや赤みを帯びた白色で枝先に3〜8個が下向きに咲く。花冠は鐘型で浅く4裂する。液果は赤く熟し、甘酸っぱい。生食したり、果実酒やジャムにする。

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イワテハタザオ
こちらの白い花は、イワテハタザオ(Arabis serrata var.japonica f.fauriei)という多年草岩手山秋田駒ケ岳の砂礫地や岩場に自生する、フジハタザオの地域変種で、花や果実が小さく、花弁は8mm、花柱は2mm。フジハタザオの変種は多く、判別は難しい。

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ハクサンチドリ
これは上りでも見かけたハクサンチドリ。いつ見ても、鮮やかな色、複雑な花弁の形、溌剌とした動きを感じさせる全体像、それらが絡み合って高山植物への愛着を呼び起こす不思議な花である。

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ショウジョウバカマ
こちらの風変わりな花は、ショウジョウバカマHeloniopsis orientalis)という常緑多年草。北海道〜九州の山地帯〜高山帯のやや湿った草地に生育する。根生葉はロゼット状につき、やや厚くて光沢があり、倒披針形〜狭長楕円形で先は尖る。1025cmの花茎の先に、2〜6個の花を横向きにつける。花被片は6個で、淡紅紫色から濃紅色まで変化が多い。

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ノウゴウイチゴ
こちらの可愛いイチゴは、ノウゴウイチゴFragaria iinumae)という多年草。北海道と本州の大山以北の日本海側の亜高山帯〜高山帯の林縁や湿り気のある草地に生える。葉は3出複葉で根生する。同じオランダイチゴ属のシロバナノヘビイチゴと姿はそっくりだが、花弁の数がこちらは7〜8個なのに対し、シロバナノヘビイチゴは5個なので見分けられる。

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サンカヨウ
鮮やかな緑色の大きな葉の間から白い花を咲かせているのは、サンカヨウDiphylleia cymosa ssp.grayi)という多年草。北海道と本州中部以北、大山の山地帯〜亜高山帯の林縁や林内や草原に生える。高さは3060cmで、茎や葉に縮毛がある。葉は2個付き、下の葉は長さ1030cm、幅1235cmの腎円形で粗い鋸歯がある。上の葉は小さくほとんど無柄。花は直径2cm。萼片12個のうち外側の6個は緑色で開花すると落ちる。内側の6個は白色で花弁状。液果は秋に黒紫色に熟し、白粉をかぶる。食べることもできる。

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ガクウラジロヨウラク
こちらの釣鐘型の花は、ヨウラクツツジ属のガクウラジロヨウラクMenziesia multiflora var.longicalyx)という落葉低木。北海道〜本州中部地方以北の山地帯〜亜高山帯のやや湿った林内や草原に生える。高さは30100cm。葉の裏面は帯白色。花は淡紅紫色で垂れ下がって咲く。主に太平洋側に多く分布するウラジロヨウラクの、萼の長い変種で、主に日本海側に分布する。

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ズダヤクシュ
こちらの小さな花は、ズダヤクシュ(Tiarella polyphylla)という多年草。北海道、本州近畿地方以北、四国の山地帯〜亜高山帯のやや湿った針葉樹林内や林縁に生える。花茎は高さ1040cm。白い花がややまばらな総状につき、下向きに咲く。花弁は針状で、5裂した白い萼片が花弁のように見える。葉は茎に互生し、モミジ形の葉をつける。富山県福井県、長野県では喘息の咳止薬として用いられてきたので喘息薬種という名がついた。

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コミヤマハンショウヅル
こちらの風変わりな花は、コミヤマハンショウヅル(Clemeatis alpina ssp.ochotensis var.fauriei)という蔓性の多年草センニンソウ属のミヤマハンショウヅルの地域変種で、八甲田山岩手山秋田駒ケ岳早池峰山飯豊山地などの亜高山帯〜高山帯の砂礫地に特産する。葉は3出複葉。花期は6〜8月、花を下向きに咲かせる。赤褐色の花弁状の4個の萼片の縁には、白い毛が密生する。花弁は10数個あり、細いヘラ型。
 

秋田駒ケ岳

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秋田駒ケ岳
秋田駒ケ岳は、十和田八幡平国立公園の南端に位置する北東北の名峰の一つであり、秋田県一の標高を誇る。乳頭温泉郷や乳頭山からも登山道で繋がっているが、男女岳(1637m)・男岳・女岳の総称である。田沢湖高原温泉郷のアルパ駒草からマイカー規制されている駒ヶ岳8号目までシャトルバスが運行している。8号目に着くと、目の前には片倉岳の裾野が広がり、左手の地肌がむき出しになっている日窒硫黄鉱山跡が眺められる。

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オオバキスミレ
鉱山跡に近づいた道端に黄色いスミレが咲いていた。オオバキスミレViola brevistipulata)という多年草。北海道南西部、本州近畿地方以北の日本海側に分布し、山地帯〜亜高山帯の林下や林縁、草地などに生える。花期は4月中旬〜7月。直径1.5cmほどの黄色の花弁の唇弁と側弁には褐紫色の筋がある。和名の由来は、他のスミレと比べて葉が大きく黄色の花であることによる。

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日窒硫黄鉱山跡
8号目から見た、日窒硫黄鉱山跡のすぐ脇を登山道は上っていく。

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乳頭山
北東を眺めると、乳頭山(1477m)が乳首のような姿を見せていた。右の尾根続きの先には笊森山(1541m)が構えている。八幡平は乳頭山の左手の彼方に広がる。

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片倉岳展望台
半時間ほどで片倉岳展望台(1456m)に着く。クマ出没注意の標識が目を引く。前方(西南)に田沢湖の姿が少し見えてきた。

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ミヤマダイコンソウ
足元にはミヤマダイコンソウ(Geum calthifolium var. nipponicum)という多年草。ミヤマダイコンソウ属(Acomastylis)に分類されることもある。北海道・本州中部以北・奈良県大峰山、四国の石鎚山の亜高山帯〜高山帯の岩隙、砂礫地に生育する。花期は7〜8月。直径2cmほどの5弁花を咲かせる。頂小葉は直径2〜12cmと非常に大きい腎円形で光沢があり、縁には鋸歯がある。

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田沢湖
さらに進むと田沢湖の全景が右前方(西南)に見えてくる。田沢湖はほぼ円形で直径は約6km、水深が423.4mと日本で最も深く、コバルトブルーの湖面の美しさには定評がある。

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チングルマ
ようやく高山植物が咲き乱れるお花畑らしくなってきた。この花は、雪解け後のお花畑の常連、チングルマSieversia pentapetala)という落葉小低木。北海道と本州中部以北の高山帯の雪田周辺の砂礫地、渓流沿いや砂礫の多い草地に生育する。高さは約10cm。葉は奇数羽状複葉。花は帯黄白色で枝先に1個ずつつき、花弁5個、広楕円形で縁は波打つ。先端に残る花柱は、花後3cmほどに伸び、紫褐色の絹毛が開いて羽毛状になり、風に戦ぐ姿が可愛らしくなる。

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タカネキスミレ
こちらの黄色のスミレは、タカネキスミレ(Viola crassa ssp. crassa)という多年草。東北地方の岩手山秋田駒ケ岳早池峰山焼石岳などの高山帯の砂礫地に生える日本固有種。花期は6〜7月。葉は腎円形で厚くて光沢がある。花は濃黄色。上弁と側弁は上を向き、唇弁は大きく暗紫色の筋がある。よく似たキバナノコマノツメのようには先が尖らない。

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イワカガミ
こちらも高山でよく見かける可憐なイワカガミ(Schizocodon soldanelloides)という常緑の多年草。北海道〜九州の高山帯〜山地に分布し、草地や岩場に生育する。葉は厚く光沢があるため、岩鏡と呼ばれた。葉身は円形で縁には鋸葉がある。花期は4〜7月。花茎の先に3〜10個の花を総状花序につける。花は淡紅色。花冠は径1〜1.5cmになり、漏斗状で5裂し、裂片の縁はさらに裂けて房状になる。その独特な姿が印象的である。イワカガミにはいくつも似た種類があるが、これは最も普通のイワカガミと思われる。

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ムシトリスミレ
こちらのスミレに似た花は、タヌキモ科ムシトリスミレ属のムシトリスミレ(Pinguicula vulgaris)という多年草の食中植物。北海道と本州中部以北、四国の石立山の亜高山帯〜高山帯の湿地、湿った草地や岸壁に生える。葉は長楕円形で内側に巻く。表面に密生した腺毛と腺体から消化粘液を出して小さな虫を捕食する。スミレに似た花は、青紫色で基部に尖った距を持つ。

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ハクサンチドリ
イワカガミの左の花は、ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata)という多年草。北海道と本州中部以北の亜高山帯〜高山帯の草地に生える。礼文島や八幡平でも見かけた高山植物の代表的な花の一つである。紅紫色の花は総状に数個〜10数個つき、花弁は鋭く尖り、唇弁の裂け方は変異が多い。

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秋田駒ケ岳のお花畑
残雪がまだ見かけられたが、平らなお花畑はチングルマを中心に波打つように広がっている。お花畑というとハクサンイチゲシナノキンバイが有名だが、秋田駒ケ岳には自生していない。

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阿弥陀池

ようやく阿弥陀池に辿り着いた。秋田駒ケ岳には何度も来ているが、今までで一番晴れていたと思う。ここでゆっくりと休憩する。

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男岳
右の方(西)には男岳(1623m)が構えていて、左手から稜線伝いに登っていく人の姿が認められた。頂上までは20分ほどである。
 

八幡平・大沼、乳頭温泉郷・鶴の湯

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大沼
八幡平の秋田県側(西)の麓に大沼がある。八幡平で最も大きい沼という。一周約2kmの遊歩道があり、1時間弱で散策できる。沼に面する八幡平ビジターセンターに駐車場もある。

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タニウツギ
大沼は標高約950mにあり、ワタスゲなどの高山植物も見られる。この桃色の花は、タニウツギWeigela hortensis)という落葉低木。北海道西部と本州の主に日本海側の山野に普通に生え、高さ2〜5mになる。5〜7月、淡紅色または紅色の花を2〜3個ずつつける。花冠は漏斗形で先は5裂する。庭木や公園樹にも利用される。

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ニッコウキスゲ
遊歩道を左回りで歩き始める。早くもニッコウキスゲHemerocallis dumortieri var. esuculenta)が咲いていた。本州の中部地方以北の山地帯や高山帯下部の草地や湿地帯に群生する多年草で、葉は全て根生し、花茎は高さ6080cmになり、橙黄色の花を3〜4個つける。花は朝開いて夕方にはしぼむ一日花である。

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コバイケイソウ
こちらの白い花は、コバイケイソウVeratrum stamineum)という多年草。北海道と本州中部地方以北の亜高山帯〜高山帯の草地に生える。茎は高さ0.5〜1mになり、花は円錐状に多数つき、普通、頂枝に両性花、側枝に雄花がつく。緑色の雌蕊が目立つのが両性花である。

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ツルアジサイ
枯木に絡みながら這い上っているこの花は、ツルアジサイHydrangea petiolaris)という落葉つる性木本。北海道〜九州の山野に分布する。幹や枝から気根を出して高木や岩崖に付着し、高さ5〜20mほどになる。花期は6〜7月で、クリーム色の小さな5弁の両性花が集まる花序の周りに、白色で四枚の花弁状の大きな萼片をもつ装飾花が縁どる。若葉は山菜として食べられる。

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イソツツジ
こちらの小さなツツジは、イソツツジLedum palustre var.diversipilosum)という常緑小低木。北海道南部と本州東北地方の亜高山帯〜高山帯の岩礫地や湿った草地に生育する。樹高は3070cmになり、葉は互生する。花期は6〜7月。枝の先に散房花序を出し、多数の花をつける。花弁は白色で5枚。

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ワタスゲ
沼の周りの湿地帯にはワタスゲEriophorum vaginatum)が群生している。北海道と本州中部地方以北の亜高山帯〜高山帯の高層湿原に生える多年草。花期は5〜6月。花後、大名行列の毛槍のような白いふっくらした果穂をつくる。和名は綿菅とも表記し、別名でスズメノケヤリという。

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ハクサンシャクナゲ
こちらの石楠花は、ハクサンシャクナゲRhododendron brachycarpum)という常緑低木。北海道と本州中部地方以北と四国の亜高山帯〜高山帯の針葉樹林やハイマツ帯に分布する。樹高は1〜3mになる。花は白から淡い紅色で、内側に薄い緑色の斑点がある。蝶は、イチモンジセセリParnara guttata)。日本全国に分布する、最も普通のセセリチョウ

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レンゲツツジ
こちらの鮮やかな色のツツジは、レンゲツツジ Rhododendron japonicum)という落葉低木。北海道南部〜九州の草原に多く自生する。花期は4〜6月。花は直径5cmほどの漏斗状で、葉が出てすぐに咲く。庭木にもよく利用されるが、全木に有毒物を含むので、花の蜜を吸ってはならない。

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乳頭温泉郷・鶴の湯
八幡平から玉川温泉を経由して、まだ明るいうちに乳頭温泉郷にある鶴の湯に着いた。ここは同温泉郷の中で最も古くからある温泉宿で、古くは寛永15年(1638)に二代目秋田藩主:佐竹義隆が、寛文元年(1661)に亀田藩:岩城玄蕃が鶴の湯に湯治で訪れたといわれる。藁葺き屋根の本陣は、佐竹義隆が湯治に訪れた際、警護の者が詰めた建物であり、今では鶴の湯を代表する建物となっている。茅葺は数十年ごとに葺き替えられている。

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黒湯と白湯
湯の沢を渡るとすぐある建物が黒湯で、天気が崩れる前には湯の色が黒くなるという。湯冷めがしにくく湯たまりの湯とも呼ばれる。その右奥に連なる建物が白湯で、鶴の湯で最も湧出量の多い混浴露天風呂と同じ源泉から引かれた湯。冷えの湯や美人の湯とも呼ばれる。黒湯の左奥に連なる建物は、大白の湯という女性専用露天風呂である。

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湯の沢沿いの露天風呂
黒湯・白湯の右手の湯の沢沿いに大きな混浴露天風呂がある。源泉は白湯と同じである。その右手に中の湯があり、神経痛や眼病に良いとされ、眼っこの湯とも呼ばれる。疲れが取れる湯としても評判高い。混浴露天風呂の右奥に打たせ湯の滝の湯がある。

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本陣の奥から入口を見る
時代劇のセットを思わせる佇まいの鶴の湯の入口は、まさに秘湯気分を実感できる。鶴の湯の半径50m以内に泉質の異なる白湯・黒湯・中の湯・滝の湯という4つの源泉があり、8つの風呂でハシゴ湯(湯巡り)が堪能できる。
 

八幡平、蓬莱境

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八幡平から見る岩手山、夜沼
6月下旬、八幡平、秋田駒などを大急ぎで散策した。盛岡では快晴だったが、八幡平アスピーテラインを走る頃には雲が湧いてきた。岩手山2038m)も薄曇りの中で霞んできた。眼下に見える沼は夜沼で、右手の山は大深岳1541m)である。

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蓬莱境入口
八幡平頂上直下の見返峠(1540m)に着く頃には雲が次々と湧き出て、今にも雨が降りそうになった。八幡沼を一周する山頂散策路は以前歩いたことがあるので、時間が短くて済む藤七温泉下の蓬莱境を歩いてみることにした。蓬莱境入口の道路脇にはまだ大きな残雪があった。

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水芭蕉
雪解けとともに咲き始める水芭蕉が、小振りだが可憐な花を数多く花開いていた。

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オオイワカガミ
道端には赤いイワカガミの花が咲いていた。イワカガミの仲間はいくつかあるが、花数が12個ほどあるこの花は、オオイワカガミ(Schizocodon soldanelloides var.magnus)と思われる。

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ハクサンチドリ
赤紫色のこの花は、ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata)という多年草。北海道および中部地方以北の高山帯の湿り気のある場所に自生する。よく見かける高山植物なので親しみを感じる。

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ムラサキヤシオツツジ

蓬莱境入口から林の中を入ると可憐な赤紫色のツツジが咲いていた。ムラサキヤシオツツジ(Rhododendron albrechtii)という落葉低木。北海道と滋賀県以北の山地帯〜亜高山帯に生える日本固有種。

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ミツバオウレン
こちらの小さな白い花は、キンポウゲ科オウレン属のミツバオウレンCoptis trifolia)という常緑多年草。北海道および中部地方以北の亜高山帯〜高山帯の林内、林縁に生える。白い花弁状の萼片は5個。花弁は萼片より小さく黄色の高坏状。

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エンレイソウ
大きな葉が3個輪生し、暗紫色の花を咲かせているのは、エンレイソウTrillium apetalon)という多年草。北海道〜九州の山地帯〜亜高山帯のやや湿った林内に生える。礼文島利尻島で見たオオバナノエンレイソウやミヤマエンレイソウは白い花だったが、このエンレイソウは暗紫色なので見分けやすい。

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蓬莱境遊歩道
蓬莱境は蓬莱沼まで一周約40分の遊歩道があるというが、大量の残雪で道が覆われていたため散策は取りやめた。

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ミヤマキンポウゲ
入口脇の道端には黄色いミヤマキンポウゲRanunculus acris var. nipponicus)がたくさん咲いていた。北海道〜中部地方以北の亜高山帯〜高山帯の湿り気のある場所に生える多年草で、雪渓周辺に大群落を作る。花期は7〜8月。雪解け後に開花する。

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オオカメノキ
こちらの白い花はオオカメノキ(Viburnum furcatum)というガマズミ属の落葉低木。ムシカリとも呼ばれる。北海道〜九州の山地のブナ林内や針葉樹林内に自生する。花期は4〜6月。白色の小さな両性花の周りに大きな五枚の花弁を持つ装飾花が縁取る。葉は円形で亀の甲羅に似る。葉脈が皺状に目立ち、縁に鈍鋸歯がある。

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イワイチョウ
こちらの白い花はミツガシワ科のイワイチョウNephrophyllidium crista-galli)という多年草。別名、ミズイチョウという。北海道〜中部地方以北の亜高山帯〜高山帯のやや湿り気のある場所に自生し、群生することが多い。根生葉は厚く、腎形で縁には細かい鈍鋸歯がある。花期は7〜8月。花茎は2040cmになり、花は数個〜10個が集散状につく。花冠は5深裂する。裂片の縁には波状のしわがある。